平成6年度においては、愛他行動の形成に影響する要因としての他者存在の有無に関連して、前年度の計画にしたがって、実験を行なった。結果については、現在分析中である。すなわち、「他者の存在」は発達的に情況的要因として抑制的に働くものであり、「教師についても、その存在と非存在において児童の教室における愛他行動の量についても差をひきおこす」という仮説の下に観察を行なった。また、教室での教師の存在場面における小学校高学年の児童の規範的行動は、他者存在に対する社会的強化によるものであるのか、あるいはすでに同一視などを通して内在化されたものであるかについては明らかとならなかった。それについては、平成7年度も引続き同じ被験児を使用して観察を行う予定である。 現在、詳細な結果については分析中であるが、愛他的な行動の自発的な出現は持続性をもたないという傾向が見られている。すなわち、小学校5年生でのクラスでの寄付行動の要請は、始めの3日間はかなり多くの児童が寄付行動のためのボランティアを行なったが、1週間後には、ほとんど見られなくなった。また、男児と女児の比率は女児の方がボランティアを行う子どもの比率は高かった。しかし、ボランティアに基づく寄付行動については、男児と女児の比率に差は見られなかった。これらの結果から、平成7年度においては、同様の被験者を用いて、活動性及び友人間のゲスフ-テストによるポピュラリティについての調査もあわせて行う予定である。
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