平成6年度において、愛他行動の形成に影響する要因としての他者存在の有無に関連して、計画にしたがって実験を行なった。そこでは、教室内の愛他行動及びボランティア行動に影響する、教室内の愛他行動及びボランティア行動に影響する、教室内における教師の在-不在、寄付行動の内容、性差、および教師の特性について検討が行われた。基本となる手続きは、(1)教室内にビデオカメラの設置、(2)教室でのカメラに慣れるように1週間程度ダミ-の撮影(3)各クラスで3回の実験授業時間、(4)教師不在の教示は「先生は、用事があって職員室にいかねばなりません、皆さんはそのまま自習を続けて下さい」である。(5)また、教師の不在中における愛他行動、ボランティア行動は、ビデオによって撮影された。(6)愛他行動の測定は寄付行動行動によって行われ、ボランティア行動の測定は、寄付行動を行うための袋づめによって測定された。結果は愛他行動に関する自発的な行動の出現は持続性をもたないという傾向が見られた。すなわち、クラスでの寄付行動の要請は、始めの3日間はかなり多くの児童が寄付行動のためのボランティアを行なったが、1週間後には、ほとんど見られなくなった。教師の存在条件と不在条件で、袋づめ行動の比較は、1日目から5日目および合計値においても有意な差は見られなかった。このことは、教師の存在が袋づめ行動に影響を与えていないかったと考えられる。この研究では、川島(1991)において提出された、「他者の存在は、発達的に状況的要因として抑制的に働くものであり、教師についても、その存在と非存在において児童の教室における愛他行動の量についても差をひきおこす」という仮説は明らかにならなかった。
|