今年度は、文献的研究の基礎の上に立って、大学生と小学校児童を対象とする質問紙調査、および小学校児童と中学校生徒を対象とする面接調査と質問紙調査を合計610名に行ない、1 児童の努力に対する感情測定尺度、を作成した。また、小学校の教師によって行なわれた、担任する児童合計290名を対象とする児童の努力の実態に関する回答にもとづいて、2 教師の努力観尺度、が作成された。そして、2つの尺度と児童の学習意欲、学業成績、児童の努力観との関連が検討された。さらに、小学校教師と大学生合計515名を対象とする努力観の自由記述調査を行なった。現在、努力に対する感情の1年間の変化と学習意欲の関連性を調査中である。 今年度の研究によって得られた主要な成果は、次のような内容であった。 1 努力に対する感情尺度としては、「積み上げる」などからなる向上性尺度と「明るい」などからなる感情性尺度の二つが区分された。両尺度とも、学年の経過とともに低下していたが、特に、感情性尺度は、小学校2学年以降直線的に低下していた。中学以降の急速な低下は知られていたが、これは重要な知見である。 2 教師の努力観尺度としては、「興味や関心を持つ」などからなる向上性尺度と「手を抜かずに取り組む」などからなる持続性尺度の二つが区分された。いずれも、女子>男子であり、向上性は学年とともに低下していた。 3 感情尺度と努力観尺度は、いずれも、学習意欲と密接に関連していたが、学業成績とは、後者についてのみ密接な関連性が認められた。努力観尺度と感情尺度の感情性下位尺度との間に関連性が認められないことと併せて考察すると、教師は、学習意欲や学業成績に関連する努力の側面を非常によく捉えているが、児童の感情に関わる努力の側面を捉えていない可能性が指摘される。これは、今後実践的に検討していく必要がある。
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