昨年度までに作成された児童の努力に対する感情尺度の2つの下位尺度(向上性尺度と感情性尺度)と児童の友人関係・規範遵守についての態度との関連性を、小学校5年生135名を対象に検討した。なお、友人関係については、(1)相互交流、(2)交流不振体験、(3)友人批判、および(4)自己閉鎖の4つの側面が取り上げられた。その結果、向上性尺度得点と友人との相互交流・規範遵守についての態度の間に正の関連のあることが明らかにされた。感情性尺度得点については、規範遵守との間に正の関連のある可能性が示された。また、児童の努力に対する感情尺度と生徒の数学の好き・嫌いの関連性についても、中学生198名を対象にして検討された。その結果、全体として、努力に対する感情と数学の好き・嫌いが関連していることが示されたが、とりわけ、向上性尺度得点との間に明確な正の関連が認められた。 その他、本年度の中心的検討課題については、以下のような進行状況にある。 児童の努力に対する感情尺度と学習意欲尺度を測定用具として、授業実践の展開に伴うこれらの尺度の変化については、現在分析している途上にある。授業実践が多岐にわたるため、尺度上の変化と授業実践の対応づけに苦慮している。 また、研究遂行上の基本的問題として、個人差や場面差などのため、行動的資料と表情的資料を学習意欲測定のための指標として確立することの困難さが明らかにされた。さらには、多岐にわたる資料の統合的把握が困難であるため、これらの資料と学習意欲の客観的な対応づけも必ずしも明確に示すことができていない。資料の量的処理自体が誤りである可能性もあり、事例研究的な質的処理の方向をも探究する必要がある。
|