1.研究成果の公表:本年度は、これまでの研究結果をまとめて、報告書として公表した。そこでは、努力に対するイメージ尺度作成の試み、努力に対するイメージ尺度を用いてその発達的変化・学習意欲や学業成績との関連の検討、教師の努力に対するイメージと児童の努力に対するイメージの関連、努力に対するイメージと教科の好悪との関連、努力に対するイメージの生成過程に関する検討など、が取り上げられている。 2.努力を想起する場面と努力に対するイメージの関連性の検討:昨年度までの研究から、(1)努力に対するイメージが、向上性尺度と感情性尺度の2つから構成され、(2)感情性尺度の年齢に伴う急激な低下が認められたため、(3)感情性尺度の低下が、学習意欲の低下へ導くのではないかと考えた。その上で、(4)感情性尺度の友人関係との関連を想定して検討したが、必ずしも明確な関係を見つけることはできなかった。本年度は、感情性尺度の生成過程の再検討を行うこととし、努力を想起する場面と感情性尺度の関係を検討した。小学生・教師・大学生の資料を得て、現在分析中であるが、大学生については、努力を想起する場面として、勉強場面と運動場面が多いこと、男子に運動場面が多く、女子に芸術場面が多いことなどの結果が示されている。 3.今後の課題-教育実践の展開と努力に対するイメージの肯定的方向への転換-:本研究の最終的な研究目的の一つが、上記の内容であった。しかしながら、教育実践の多様さ、そこにある多数の要因の複雑な相互作用、調査対象者の側の個人差や場面差、および表情的、行動的資料を学習意欲測定のための客観的指標として確立することの困難さから、時間的制約もあり、現在の時点で、明確な結果として取りまとめることはできなかった。これらの資料のさらなる分析と対応づけが、今後の課題である。
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