欧米では、原因帰属理論の立場から、能力帰属を努力帰属へ変更する教育的働きかけが、学習意欲の回復に効果的であると言われてきた。しかし、今日では、努力帰属が無気力へ結びつく場合のあることが注目されている。わが国では、多数の児童生徒が努力帰属し、かつ学習意欲を喪失していることが指摘されている。本研究では、わが国においては、努力帰属ではなく、努力に対するイメージが学習意欲を規定しているのではないか、したがって、努力に対する否定的感情を肯定的なものに変えることによって、無気力を克服できるのではないかとの立場から、研究を展開した。研究結果は、この立場を支持する方向を示していた。 研究報告書においては、現在の時点で、資料を分析することのできた以下の論文を収録している。 1.努力に対するイメージ尺度作成の試み:小学生と大学生を対象として行われた。努力に対するイメージの2つの側面を抽出した。2.努力に対するイメージの年齢的推移と学習意欲・学業成績との関連:小学校2学年〜6学年、および中学校2学年の児童生徒を対象として行われた。3.教師のとらえた努力する児童像:教師から得られた小学校2学年〜6学年の児童の資料を分析し、教師の努力観の2つの側面を抽出し、その年齢差や性差を検討した。また、学習意欲・学業成績・努力に対するイメージとの関連性も検討した。4.小学校児童における努力に対するイメージと友人関係:小学校5学年児童を対象に行われた。5.努力に対するイメージと数学学習への志向との関連性の検討:中学生を対象として行われた。努力に対するイメージと数学学習の好き嫌いの関連性を検討した。この他、努力に対するイメージの生成過程の再検討を企図した論文などを掲載している。 なお、教育実践に伴う、努力に対する否定的感情の肯定的感情への転換については、現在資料を分析中である。
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