1 対象家族の選定:登校拒否児の性差、年齢差、登校拒否の期間、家族構成等の要因を考慮して10家族を選定した。 2 家族療法面接場面のデータベース化:すでにビデオテープに記録されている家族療法事例の各面接場面での家族員の行動分析を行なった。 (1)家族およびセラピストの発言内容の逐語録を作成し、分類した。 (2)家族員相互のアイコンタクトや姿勢・動作などの非言語行動についても分類した。 3 分析ソフトの開発:上記の面接資料をデータ・ベースに組織的に入力するためのソフト・プログラム(「家族療法エキスパート・システム」)を開発した。 4 データ・ベース作成:開発したプログラムを用いて面接記録を入力し、登校拒否の家族療法事例データ・ベースの作成を開始し、すでに10家族については作業を完了している。このデータ・ベースに収録されたある解決事例の概略を以下に示す。 5 A家の事例の概要:家族療法初期には母親と中学生の不登校児に独語が多く見られたが、中期には消失し、家族コミュケーションが活発となった。終期には、不登校児が視線を向ける対象者の偏りが減少した。一方で、母親が不登校児に向けた発言は減少し、視線を向ける頻度は倍増した。初期に癒着状態にあった母子間の関係が変化し、終期には適度な心理的距離が確保され、母親が不登校児を見守る姿勢を取るようになったことが確認された。本児は家族療法終結後に公立高校の定時制に合格し、大学進学を目指している。
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