研究概要 |
昨年度までに観察した自閉症を疑う幼児,および今年度新たに観察対象とした自閉症状をもつ幼児7名において自由遊び場面での母子相互反応の観察と3歳を過ぎた疑自閉症群と疑精神遅滞群の追跡調査を行った.自由遊び場面における行動観察はこれまでと同じ手続きで観察を行い,分析も同様に行った. 母子間の自由遊び場面でのやりとり行動をトランスクリプト資料とVTRを照合する質的な分析の結果は昨年までに報告した結果と同様であった.すなわち,疑自閉症群は母子間のやりとり行動は観察できるが,それがどのような意図のもとで行われているのか理解しにくい.とくに,子どもから母親に対する働きかけ,母親の働きかけに対する応答行動は観察されても,それがどのような意図なのか理解できない.つまり,自閉症児群では母親との間に非言語的レベルのコミュニケーションが成立していないと推測される. 一方,3歳を過ぎた対象児の追跡調査を行ったところ,追跡のできた3名のうち2名は発語があり,保育園での集団生活で対人関係が広がってきている.ところが,1名は発語がなく,指示を理解することが十分にはできていない.対人関係も何とか集団の中にとどまっている状態で,相互関係は見られない.比較的に発達の良い前者2名は親子関係が良好で保育園の保母との関係も良い.しかし,後者は母親の家族関係が不安定で,保母との関係も難しい状態にある.これは母子の相互交流がどのように行われていたの興味ある結果である.つまり,母親のおかれている心理社会的状況が母子相互交流に影響した可能性があり,今度詳しく検討する必要がある.
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