今年度の研究の主目的は、ストレス性疾患の心理・行動特徴として、しばしば取り上げられる過剰適応、失感情傾向について新たに作成した質問紙によって健常者のデータを得ること、またこの研究と平行して心身症患者を対象としてリラクセーション訓練とイメージ面接を行い、質問紙の実際的妥当性を確認し、臨床面からタイプAの失感情的特徴を確認することであった。 本年度の実績として、本研究者が構成した新しい質問紙を100名の健常被験者に施行し、心身症患者のデータと比較できる対照群データを獲得することが出来た。 このデータと前年度に蓄積した心身症患者のデータ、また今年度追加した心身症患者のデータに対してカテゴリカル・データに対する多次元尺度構成法による分析を行った。この結果前年度と類似した分析結果を得ることが出来た。すなわちこの質問紙によって健常者群と心身症患者群との判別が可能であり、さらに心身症患者群のうち視床下部・下垂体系のドーパミン作動系機能に歪みのある群と、この機能が正常な群とを判別することが可能であった。このことから新しい質問紙の妥当性を確認できたと考えられる。 また本年度は調査対象とした患者群の一部にリラクセーション訓練として自律訓練を施行し、その成績を自記式質問紙によって報告させた。この結果タイプA的な特徴を持つ被験者はリラクセーションが困難で、リラックス時の自分の身体感覚が乏しく、想起されるイメージも乏しいことが明らかとなった。
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