過疎-高齢化地域である宮城県江島を対象地域として、老人期社会化の変化についての長期継続調査研究の結果えられた知見は、以下のとおりである。 1. 江島地域は、戦後、人口と世帯数の減少を被り、昭和60年から過疎-高齢化した。(1)この結果、地域漁業活動は全体的に縮減した。同時に地域老人層は地域漁業の維持との関係から、引退抜きの老人期という新しい事態への適応を迫られることになった。(2)この新しい老人期の次ぎの課題は地域から他出した次世代家族との統合となっている。 2. 地域青年層は遠洋漁船乗組みと高校進学という2つの経路を経て地域から離れていったが、中でも高校進学の一般化が地域漁業にあたえた影響は甚大であった。(1)中学生の進路選択は、昭和30年代の就業型から昭和40年代の就業・進学型をへて昭和50年代以降の進学型へと変化している。(2)これには性差が認められ、女子は一貫して地域離脱・地域構造非準拠型であり、男子は地域残留型・地域構造準拠型から地域離脱型へと変化した。(3)中学生の成績は年代的な上昇傾向を示していた。(4)これらの結果は地域の社会化システムが伝統的な地域社会化システムから学校型のそれへと変化したことを示唆している。 3. この変化には現在の老人層とその次世代層がともに関わっていた。そして保護者成人層は自分の老人期が従来のそれとは異なるものになることを予期的社会化の中に組み込んでいたことを意味しよう。この新しい老人期は、地域老人層がかつて自分の子供たちを社会化する過程で、子供たちに伝統的な進路選択を期待せず、地域離脱型の進路選択を許容した結果の1つであった。 4. 現在の新しい老人期は、現在の老人層が成人期の頃に予想していたことであった。この展望のもとにかれらは地域外への転出準備として地域外の家屋を購入したのである。
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