本研究の目的は、平成6・7年度の2年間で、先に平成2年度科学研究費(奨励研究)を得て筆者が開発した日本版Health Locus of Control尺度によって測定される個人の健康や病気に対するコントロール信念の特性と、疾患に対するイメージや生命倫理問題に対する態度との関連について検討することである。 研究の初年度には、大学生と看護学生とを対象として、SD法を用いてさまざまな疾患についてのイメージを測定した。その結果、疾患の身近な経験は、疾患イメージのうちでも心理的距離の因子に反映されること、生物医学的専門知識の有無は、その疾患イメージの形成に多面的に影響していることがうかがえた。また、個人のhealth locus of controlの特徴によって、疾患イメージも異なっていることが確認された。 研究の2年目には、個人のhealth locus of control特性の測定と同時に、生命倫理問題への態度や想定された心身不調に際してとる対応について、日本の大学生と中年期以降の成人、および韓国とアメリカの大学生とを対象とした質問紙調査を行った。その結果、生命倫理問題については、4群の対象者はいずれも異なる態度を示しており、またこれらの態度は個人のhealth locus of controlの違いを反映していることが示された。想定された心身不調に対して選択する対処法については、不調の種類によって対処法は異なるものの、対象者群間での差異も大きいことが明らかとなった。またいずれの対象者群においても、個人のhealth locus of controlの特徴と選択する対処法との間に関連性が認められた。さらに、日本と韓国およびアメリカの大学生のhealth locus of control尺度得点についての因子分析結果の比較から、これらの3群間で、健康や病気についてのコントロール信念の内容に差異のあることが示唆された。
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