1.3保育園の3クラスの縦断行動観察:平成4、5年の第1研究を継続し、異文化児の在籍する3クラスの観察を行った。今年度は卒園年にあたるため、この3月までの3年間に渡る記録の分析を平行して行っている。ビデオ資料の1部について行動の分類、分析を行い、以下の結果を得た。(1)異文化児と日本児の相互作用行動は、異文化児の入園後の時期によって質量ともに異なり、異文化児の積極的働きかけ行動の増加が見られた。この増加は日本児の応答の質の変化と相互に関係があると見なされた。(2)異文化児によって個人差のある行動特性と、共通の変化を示す行動特性のあることがわかった。 2.異文化児を巡る社会的ネットワーク:(1)異文化児やその両親が、園との関係でもたらす問題を分析した結果、両親のおかれた社会的文脈やサポートシステムの影響が反映される可能性があり、異文化児独自の問題は少ないとみなされた。(2)異文化児の保育施設、就学施設選択の意志決定にかかわる要因は、異文化児本人の社会的ネットワークよりも、両親の自己文化の維持にかかわる要因が濃厚であった。まず、自己文化の育児観に合う施設を選び、合わない場合にはどういう点で役立てるかを位置づけるなど。しかし、合わない施設で問題が生じたときには理由は文化的信念の対立に至る。就学施設の選択に際しては、日本以外の選択枝も考慮し、その理由は日本の就学施設における諸種の問題の予期であることが多い。(3)日本語教室の異文化児にとっての機能は、自己文化ののアイデンティティの確立とも関係し、日本語の勉強以外の機能が濃厚である。ほかにクラスでの問題友達関係などへも解決の糸口を与える。両親の期待する機能はむしろ日本語の習得が中心であり、子どもの得ている経験とは異なる。今後一層多くの日本語教室での状況把握が必要である。
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