研究概要 |
MMPI新日本版(1993:三京房)の標準化データから、項目反応理論(2パラメタ・ロジスティックモデル)における困難度と識別力をLOGISTを使用して推定した。尺度D,Hy,Ma,Pa,Pdを構成している項目の多くに、困難度の推定値が極端に大きいものが多かった。このような項目の存在は、項目反応理論が仮定する1次元性がこれらの尺度で保たれていないことを示唆し、ラッシュモデル(Rasch model)では1次元性があることを示したCarter and Wilkinson(1984)の結果と異なった。この点を検討するために、各尺度ごとに主成分分析を行い古典的なテスト理論から見た内部一貫性を検討した。その結果、Si尺度を除き内部一貫性を完全に保っている尺度はなかった。さらに、複数尺度で重複して採点される項目を除いて同様に因子分析を実施した結果でも、内部一貫性に欠ける尺度が多かった。この問題を解決する方法として、1次元性を必要としないカウントダウン法に基づく適応形テストと項目反応理論に基づく適応形テストの両者の利点を供えた適応形テストを開発することが望ましいことが明らかになってきた。 項目反応理論に基づくコンピュータ化適応形MMPIのソフトの開発は、先述の1次元性の問題などで、推定した各項目の困難度と識別力をデータとして組み込むことはできていないが、仮の困難度と識別力を導入して、被検者の回答ごとに被検者の特性レベルの推定する部分まで完成している。また、カウントダウン法に基づく適応形MMPIに必要な、各項目の是認率と尺度値の関係を重回帰方程式により推定した。その推定結果が妥当なものかどうかを、既に収集した女子200名の完全版MMPIのデータに基づいたシミュレーションによって検討する予定である。このためのソフトは開発中である。
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