研究概要 |
MMP1新日本版(1993:三京房)の標準化データから、項目反応理論(2 パラメタ・ロジスティックモデル)における困難度と識別力をLOGISTを使用して推定した。さらに、各尺度ごとにテトラコリック相関をもとにした主成分分析を行い古典的なテスト理論から見た内部一貫性を検討した結果、どの尺度でも内部一貫性、すなわち項目反応理論が仮定する1次元性を比較的よく保っていることがわかった。しかし、尺度D,Hy,Ma,Pa,Pdを構成している項目のなかで是認率に大きな偏りのあるもので、困難度の推定値が極端に大きいものが多く見られた。さて、MMPIに限らず、人格検査の短縮版を作成する目的は、人格の構造を知るなどの基礎研究への利用ではなく、スクリーニングや臨床診断などの応用場面での労力の軽減にある。臨床群と正常群の弁別に大きな役割を果たしていると考えられる、是認率に偏りのある項目は、1次元性に欠けるという理由で、短縮版から削除することはできないことになる。 以上のことから、1次元性を必要としないカウントダウン法に基づく適応形テストと項目反応理論に基づく適応形テストの両者の利点を供えた適応形テストを開発することが望ましいことになる。この観点から、項目反応理論に基づくコンピュータ化適応形MMPIと、カウントダウン法に基づくものとに必要なパラメタの推定し、これを組み込んだ適応形MMPIのソフトの試作版を開発した。このソフトを使って、健常者を対象に、予備的なデータを取りはじめた。あわせて、臨床群へ適用する上でのソフトの問題点を検討している段階である。
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