昨年度の研究では、乳幼児の保育園(所)における日常ストレスが広く採取された。本年度の研究ではまず、このうち、対人ストレスに注目して全19個のストレスを最終的に抽出した後、このストレス項目に5件法で回答する対人ストレス尺度を乳児用、幼児用、別々に作成した。その後、この尺度を保育園保母42名に実施し、担当の子どもについて回答を求めた。その結果、乳児374名、幼児427名の対人ストレスのデータが得られた。データの分析の結果、乳児の対人ストレスのうち、欲求未充足によるストレスは年齢とともに高まる傾向が認められたが、身近にある対象喪失への不安によるストレスは年齢的な変化は認めらなかった。他方、幼児の対人ストレスは、欲求未充足によるものだけで構成されたが、女児のストレスの高さが目立ち、年齢による変化は認められなかった。 上記のような、乳幼児期における対人ストレスの年齢ならびに性の違いによる変化の基礎資料を得た後、この対人ストレスと性格との関係を検討する研究を展開した。このストレス易感性性格としては、保育所の保母3名の協議のもとに、28個の性格が採用され、対人ストレスとの関係が検討された。また、幼児ではこれらの性格に、タイプA性格を加えた。その結果、積極的で自己主張が強い性格をもつ子どもの対人ストレスが高まることが示唆された。また、幼児におけるタイプAとストレスとの関係では、タイプA性格をもつ幼児の対人ストレスが高いことが明らかとなり、タイプA性格のストレス易感性性格としての存在が証明された。 こうして本研究においては、ストレス易感性性格の導入的研究として、その存在と多様性を証明し、基礎資料の提示とともにこの領域での今後の研究への道筋をつけることができた。
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