本研究は、保育所(園)での生活場面を中心に乳幼児の日常ストレスとそのストレスをもたらす性格(ストレス易感性性格)について研究を行い、次の2つにまとめられる成果を得た。 1.乳幼児の日常ストレス:保母を対象に、保育園場面における乳幼児の日常ストレスを広く収集した結果、身体感覚から社会的きまり・行事まで6つに大別されるストレスが明らかにされた。発達的には、乳児から幼児期にかけて、基本的生活習慣や身体感覚などの一次的欲求関係のストレスが減少し、かわって対人ならびに社会生活上のストレスの増加が確認された。また、ここから乳幼児の対人ストレス質問紙を構成し、実際に適用した結果、乳児においては身近な対象の喪失に対する不安が高く、年齢にともない対人欲求不満によるストレスが高まった。他方、幼児においては、対人欲求不満によるストレスがどの年齢においても高く確認された。 2.乳幼児の対人ストレスと性格との関係:対人ストレス尺度を用いて、ストレスと性格との関係を検討した。ここでは、保母がとらえた28個の形容詞で表現された性格項目と、ストレス易感性性格の一つとして可能性の高いタイプA性格をとりあげ、その関係を検討した。その結果、乳幼児ともに積極的で自己主張の強い性格を持つ子どものストレスが高いことが明らかにされ、今後この方面で研究が成り立つ可能性の高さが示唆された。また、タイプA性格は幼児の対人ストレスと強く関連し、この性格のストレス易感性性格としての存在が確認され、タイプA性格の形成過程から逆にストレスを生み出さない予防法の考案が示唆される。 この他にも、幼稚園を生活場面とした幼児の日常ストレスの研究も付加され、年齢(3〜5歳)ごとに種々の日常ストレス変化が明らかにされるなど、ストレス易感性性格との関連を検討する基礎資料が得られている。
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