本年度はケース研究と調査研究を併用して、情報機器使用の実態把握、および機器の長期使用が心身へ及ぼす影響について問題点を抽出することに重点をおいた。 (第1段階:ケース研究)まず情報機器を長期間使用している肢体不自由児・者や養護学校教員から聞き取り調査を行った。次に傷害の種類や程度がさまざまな青年肢体不自由者5名の協力を得て、3週間から3ヶ月間各種装置を試用してもらい、操作性や身体への影響について継続的な観察を行った。使用機材は、APPLE社製Macintosh、キーボード、マウス、ジョイステックなどの入力装置、数種類の入力支援装置であった。これらの予備調査から得られた知見をもとに、アンケートの調査項目を抽出して質問紙を作成した。 (第2段階:アンケート調査)アンケート用紙を全国各地の脳障害による肢体不自由児・者に郵送して回答を依頼した。アンケートの発送数は638通(内訳:個人宛174通、71団体宛464通)であり、〆切期限までの回収率は28.5%であった。回答があった182通について集計を行い、以下のような結果を得た。回答者の内訳は、男性が122名、年齢は20代までが140名であり、3年以上機器を使用している者が104名であった。使用機器はパソコン108名、ワープロ114名、その他24名であった(一人で複数の回答あり)。入力装置はキーボードが主であったが、79名がキーボードカバーなどの入力補助装置を使用していた。情報機器を使用しているために生じていると思われる体の変調については、58.2%があると答えていて、内容的には睡眠傷害を始めとする様々なテクノストレス様の自覚症状が現れていた。脳障害特有の問題としては、機器使用時の持続的な筋緊張から、肩こり、筋肉や関節部位の痛みが生じているのが目立っているが、操作後の動作や姿勢への影響について自覚症状を持つ者は少ないことなどが明らかとなった。
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