当初入力補助装置だけを念頭に置いていたが、初年度の調査結果を踏まえ情報機械使用を総合的に取扱った。パソコンやワープロを日常的に使用している肢体不自由児・者208名の協力を得て調査し、以下の結果を得た。機器使用時に不便を感じる点では、キーボードがうまく打てない(95人)、マウス操作が困難(62人)、フロッピィが扱いにくい(65人)などが挙げられ、経験した機器の故障では、フロッピィディスク(44件)、プリンター(37件)、キーボード(26件)、マウス(8件)が多かった。上記の不便さ・故障の大半は、肢体不自由児・者の筋緊張コントロールの難しさを反映しており、その特性から精緻な動きを要する装置は不適であることが確認された。一方装置の長期試用報告から、特殊な入力スイッチ類は、最初は便利でもパソコンの取扱いに慣れてくるともどかしさを感じ、場合によっはてキーボードやマウス等の通常装置の方が使いやすいという報告を得た。内容の分析から標準的な装置を一部改良したり、適切な機器使用を指導するだけでかなりの改善効果が望め、疲労も少なくなるとの示唆を得た。記述式回答を参考にしてこれらをまとめ、障害の程度や筋緊張状態と対応づけた標準的装置使用の適用分類や装置改良の指針づくりを試みた。それに基づいて装置の改良を行ったり、肢体不自由児・者の機器使用を指導した。一方ソフト面では、障害者が必要とする機能を標準装備するOS(MacOS、WINDOWS95)が登場したため、ソフト開発の疲労が軽減された。また肢体不自由児・者が現在使用している機器類や回答・要望内容から、有用な装置やソフトに関する情報を極めて乏しいことが分かった。そこで本研究の後半では、入出力補助装置開発と平行して、適切な情報を伝えるためのネットワークづくりに取り組んだ。今後はソフトや装置の開発を続けると共に、パソコン通信やインターネットを通じて有用な情報を提供していくことを計画している。
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