本研究ではケース研究と調査研究と併用して、主として脳障害を持つ肢体不自由児・者の情報機器使用の実態把握、および機器の長期使用が心身へ及ぼす影響の分析を行った。その後動作法の観点から、機器使用時の筋緊張状態の特性を分析して、障害者用入力補助装置の開発の方向性を探った。 第1段階:ケース研究 障害の種類や程度がさまざまな肢体不自由児・者5名を被験者にして、情報機器の長期間(3週間から3ヶ月間)の試用テストを行った。ビデオ分析とそのレポートから、機器の操作性や健康への影響を観た。 第2段階:アンケート調査 予備調査の知見をもとに全国調査を行った。アンケートの発送数は638通(内訳:個人宛174通、71団体宛464通)であり、回収率は34.0%であった。回答者が使用している機器は、パソコン133名、ワープロ129名、その他24名であった(一人で複数の回答あり)。入力装置としてはキーボードが主であったが、79名がキーボードカバーなどの入力補助装置を使用していた。情報機器を長期間使用しているために生じると思われる体の変調については、58.6%が“ある"と答えた。内容的には睡眠障害を始めとする様々なテクノストレス様の自覚症状が現れていた。また脳性マヒ児・者特有の問題として、1日の使用時間が短いにもかかわらず、機器使用時の持続的な筋緊張から、頭痛、肩こり、筋肉や関節部位の痛みが目立った。しかし、操作後の動作や姿勢への影響について自覚症状を持つ者は少なかった。 第3段階:筋緊張分析とガイドライン作成 機器の使用時に不便を感じる点や経験した機器の故障箇所、脳性マヒ児・者の筋緊張コントロールの特性をもとに機器使用を分析し、筋緊張状態と対応づけた標準装置使用の工夫や装置改良の指針づくりを試みた。
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