本研究は、従来問題にされてこなかった、方言使用地域の幼児および就学期の児童が音声単位のメタ認知過程を、方言と共通語(書きことば)の相互影響・干渉の観点から明らかにすることを目的にしている。 今年度は、(1)調査方法の開発とその予備的実施と、(2)メタ言語能力の形成プログラムの開発のための音韻論および文字論のレビューの2点を具体的な作業目標にした。 (1)については、調査方法の開発を重点的にすすめ予備調査を行なうことはできなかったが、共通語・文字能力に関する調査、ならびに方言-共通語の使い分けと書きことばに関する自覚性の度合いを測定するテスト項目を作りパイロットスタディー的に山形県庄内地方の少数の幼児に実施した。具体的にいえば、a幼児および児童の共通語化の度合い、b一般的な音声単位分析能力、c文字能力、e方言語彙の音声単位分析、f複数の分析単位間の移行テストからなるテストを開発した。 (2)については日本語音声のモ-ラおよびリズムに関してレビューした。また調査予定地の北奥羽方言に関する特徴をリストアップし、従来報告された共通語化の項目について整理した。また従来の音声能力の発達研究および書きことば能力の発達研究を総覧して研究方法をまとめた。 以上の今年度の作業から、私たちの目的と方法が、生活語である方言と生活語を拡張する書きことば=共通語の相互関係を問題にするという意味において、ユニークであり新しい観点から言語発達過程に光を当てる研究であることを再確認した。
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