庄内地方における産業組合運動について、次の諸点を明らかにした。 第一に、大正末期以降の小作争議の性格をこえ、地主勢力に対決するだけの運動の水準に達していた。第二に、産組運動は、加藤完治に指導された、山木武夫らの指導を索引力とし、それは耕作農民の立場での徹底した実利主義に特徴をもっていた。第三に、産組運動は、農本主義にみられる「下から」の運動という契機を出発点としながら、農村の変化と自作農創設維持という国策のなかにキャナライズされ、国策そって地主勢力と対決することになる。それを支えたのも、加藤完治らの農本主義であった。 また、庄内地方の支配勢力としての旧「荘内藩勢力」は、地主勢力とともに産業組合運動と対決することとなる。その旧「荘内藩勢力」(「御家禄派」)を精神的推進力として、教学思想を持つとともに、菅原兵治や長南七右衛門らの農本主義を取り込んでいった。これまた耕作農民の運動といった性格を取り入れ、変容をとげつつ、ついに産業組合にまで浸透することになる。「対立」から「融合」へ、そして「動員」へと変質する。 本研究は、以上の諸点を明らかにしたといえよう。
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