新潟市の内野定期市(伝統型)、輪島朝市(観光朝市)、富山市蚕の市(フリーマーケット型)の三つの露店市場を比較した。得られた結論は以下の通りである。 I 露店市場の栄枯盛衰を規定する要因 1 他業態にはない独自性のある商品・・・ある露店市場が繁栄するか衰退するかは、まず第一に、その露店市場が他と競合しない独自な商品をもっているかどうか、による。独自の商品をもたない露店市場は、周囲のスーパーと競合しつつ衰退せざるをえない。 日本では一般に、露店市場はスーパーとの競合にきわめて弱い。 2 経済外的魅力・・・出店者との「なじみ関係」を作り維持する楽しみ、しろうと出店者が一時的に売手になるという変身の楽しみ、値段を交渉する楽しみ、これらはスーパーでは見いだせない露店市場独自の経済外的魅力である。これらの魅力を十分に引出せるかどうか、ということも、その露店市場の栄枯盛衰に大きく影響するだろう。 3 運営の方式・・・(1)行政による管理 (2)出店者たちの自治制 (3)行政からも出店者からも独立した委員会制-これら三つのヴァラエティが見いだされた。(1)は露店市場の活力を抑制してしまう傾向があり、(2)は露店市場の伝統化・固定化を促進し、新商品の開発などの露店市場の革新には弱い傾向をもつ。(3)は露店市場の革新を生みだすには適合的だが、実行委員会メンバーの動機づけを無償で長期に確保することはむずかしいようだ。 II 露店市場と階層・・・輪島調査のデータを重回帰分析したところ、朝市に行く頻度と、「なじみ関係」の多さが正に相関し、「階層性」(教育年数、職業威信)が負に相関した。露店市場は低階層(あるいは高齢者)の人々と親和的であるということがデータの統計学的分析より見いだされた。露店市場の魅力とは、階層的に低い人々に向けられた魅力であると解釈される。今後さらに検証すべき論点であろう。
|