平成6年度の研究の進行状況は以下の通りである。 1.研究課題に関する理論的研究:選挙における投票行動と集票行動の関連について、内外の選挙行動の理論的研究成果の検討を続けている。まず、投票行動に関しては、選挙の安定性モデルを説明する社会集団理論と、変動モデルを説明する流動的投票者仮説を検討し、両理論を総合する方法で選挙の安定性と変動の側面にアプローチする理論モデルの提起を準備している。集票行動に関しては、選挙の集団的基盤の変化に注目し、社会的ネットワーク・モデルを再検討する方向で研究を進めている。 2.研究課題に関する実証的研究:選挙に関する内外の調査資料の収集と分析が中心の課題となる。この目的に沿って、既存の実証的なデータの再分析を行うとともに、本研究のユニークな試みとして、全国各地の選挙関係機関をはじめ、行政・議会・報道機関等が実施してきた政治意識・投票行動に関する調査資料・アンケート調査結果・行政資料・郷土誌関係資料等について、全国規模で現地調査と郵送法によって調査を進めている。平成6年度の研究においては、現在までのところ、例えば各地の選挙管理委員会・明るい選挙推進協議会等が行った調査の報告書をはじめとする資料について、都道府県関係136件、政令指定都市関係65件、県庁所在都市関係36件、その他の中小都市関係88件にわたって調査収集した。特に地方中小都市におけるこの種の調査資料については殆ど知られることなく放置されており、平成7年度も引き続き調査を行い、全体を「選挙行動調査資料目録」として発表する予定である。 3.調査資料の整理と分析:全国規模の膨大な資料の整理を行うとともに、選挙に関する理論モデルを検証する二次分析と選挙制度の歴史的分析を続行している。
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