本研究は、インナー・シティで生活している高齢者が如何に処遇されるかの過程をラベリングの視点から究明することであった。この研究のために、福岡県北九州市八幡東区の尾倉地区を選んだ。八幡区は、日本を代表する鉄鋼の町である。八幡の中心地に位置する尾倉地域の高齢化率は、1995年に22.6%である。八幡地区のインナーシティの状態と高齢者の生活実態を解き明かすことのよって、地域社会が高齢者を如何に処遇するかを見つけようとした。 この研究では、質的ならびに量的な研究・資料によって分析したが、老人意識類型と近隣交流類型(地縁、血縁、友縁)に関して興味深い結果を見いだした。老人意識類型は、(「あなたは老人になったか?」、「あなたは老人と呼ばれて、気になりますか?」)という2つの設問から構成した4つの類型からなる。そのうち老人否定型(老人になったと思わない、また老人と呼ばれて気になるタイプ)が、生活満足度や生きがいなどに関して積極的な自己像をもっていること、そして地縁、血縁、友縁の関係に関しても一番よい関係を維持していることがわかった。さらに、この地域は、産業都市であり、他地域からの流動者が多いにも関わらず、インフォーマルな人間関係は、血縁関係が予想以上に高かった。 特に、こうしたインフォーマルなネットワークが、近くに住む娘に介護を期待するということと密接な関係を持っていた。つまり、尾倉地区では、都市にもかかわらず多く修正拡大家族が存在した。
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