平成6年度の研究においては、宮城県七ヶ宿町と宮城県南郷町を対象地として現地調査をおこなった。とりわけ、七ヶ宿町については、一つの集落に関してかなりインテンシヴな悉皆調査を実施することが出来た。これらの調査をおこなうことによって、以下の知見がえられた。1.脱農化、離農化の進展がいずれの対象地においても確認された。稲作の作業委託、経営委託のケースはみられたが、農地を売却する農家はさほど多くはない。このことから、農地への執着という伝統的な土地意識の存続という結論を性急に引き出すことはできない。むしろ、農地を購入し規模拡大を目指す農家がみられないということが事実に合っていると思われる。2.稲作の作業委託・経営委託という点において、平場の稲作地帯である南郷町と過疎山間地である七ヶ宿町との違いは、、作業・経営いずれにおいてもその受け手の有無である。南郷町ではまだ受け手が少なからず存在するが、七ヶ宿町においてはもはや受託をおこないうる農家はごく少数である。七ヶ宿町で稲作の委託をおこなっている農家の多くは、親戚筋の血縁を頼って稲作作業を委託し、ようやく農地を農地として維持しているのが現状である。3.七ヶ宿町において高齢者のみで構成されている農家では、稲作の春作業・秋作業等の高齢者では困難な農作業を、他出した家族員が休暇を利用して実家に来訪しておこなっていた。高齢者世帯に対する他出した家族員によるサポートは、農作業だけに限らない。例えば、衣料品・電気器具等に関する高齢者世帯の購買行動は、他出した家族員に依存しているケースが多く見受けられた。他出した子供が定期的に来訪し、親を自動車に乗せて買い物に連れていくか、宅急便を利用して衣料品等を送っていた。以上のように、過疎地域の高齢者単独世帯の生活は、まさに他出した家族員のサポートによって維持されているという点が確認された。
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