今年度は継続研究の第1年度であり、産業構造の転換とそれに伴う地域の変容、企業経営の変革、労働者状態の変化に関する文献研究に手をつけるとともに、実態分析として、賃金構造基本調査のデータを再分析して労務管理と労働者状態の変化の分析と伊那市と新居浜市で現地調査をおこなった。 そこから得られた知見の一部を示すと以下のとおりである。 1.経済の国際化と急激な円高の進行の中で、製造業の海外シフトがさらに進み、とくに近年はアジア市場を視野に入れてアジアへの工場進出が加速されている。そして国内産業の「空洞化」が進みつつある。伊那市ではバブル期に進出してきた工場が、アジアへのシフトにより、撤退したり、人員削減が行われた工場がいくつか現れている。 2.多品種少量生産化もさらに進み、生産のありかたがプロダクトインからマーケットイン方式への転換も見られ、それに合わせて、需要の変動に機敏に対処するための大型の生産ラインから小回りの効く柔軟なラインへの変更、組立ロボットを廃止し、流れ作業ではなく一人でワープロを組み立てる「一人生産方式」と称される生産システムも現れてきた。 また、中高年労働者の排除もさらに進み(大企業では50歳代前半の労働者が定年になる前に50%以上が排出されている)、雇用形態・人事管理も流動化・多様化が進行しつつある。 次年度以降、対象地域・業種を広げてこれらの実態把握を進めたい。
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