平成7年度は、産業構造の転換を明らかにするためのデータベースの構築と、長崎県佐世保市において地域産業構造の変化とそれに伴う地域・経営・労働の変容の実態調査を行った。 佐世保市の実態調査では、現在のところ次のような事実が明らかになった。かつて佐世保市は造船業と基地経済かの主要産業であったが、佐世保重工(造船業)の地域経済・雇用に持つ比重が低下した。また佐世保市経済に大きな比重を持っていた基地経済は、円高の下で米軍兵士・家族の消費・娯楽が基地内で済まされるようになり、市内の飲食店、商店へのマイナス影響が顕著に現れてきている。代わって観光リゾート産業であるハウステンボスが観光客を吸収し、地域の雇用と経済に大きな影響を与えるようになってきた。しかしハウステンボスは、長崎市観光とセットになっている形態が多く、宿泊客を多く集めるにはいたっていない。加えて長崎市観光とセットになったため、これまでの佐世保市の観光地であった西海・九十九島等への観光客は減少の一途をたどっている。 1900年代の佐世保市の産業構造は造船業と観光・リゾート産業、そして基地経済にほぼ三分される構造に変化してきているが、佐世保重工はかつての経営危機と坪内経営による混乱から未だ抜け出せず、経営と雇用について明確な見通しが立てられない状況である。観光・リゾート産業も、ハウステンボスの持つ不安定性と他の観光へのマイナス影響により、これまた21世紀への展望ができているとは言いがたい状況である。基地経済も米軍の動向と円レート対ドルの変動によって左右される要素が大きく不安定である。このように佐世保市経済(産業・経営・雇用)は全体として不安定な状態になる。
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