単独世帯の基礎的研究として以下の諸点を明らかにした。 1)世帯構成に占める単独世帯の割合は、1960年代以降急速に拡大し、21世紀初めには確実に20%台に達し、今後の日本社会において単独世帯の在り方が重大な意味を持つことになる。 2)単独世帯の性格は、大きく若年単独世帯と高齢単独世帯に分けることができる。前者は1960年代から70年代にかけて増加し、80年代以降は準世帯的な性格を脱し、近年では少数ながら親族世帯を形成せず、生涯を通した世帯類型ともなりつつある。 3)後者の高齢単独世帯は、80年代以降に増加の速度をたかめ、今後も急速に増加しつづける。施設収容から在宅・地域福祉という政策動向ともあいまって、高齢単独世帯の処遇は高齢社会の重要課題となるが、単独世帯の量的な主流は、なお若年単独世帯でありつづける。 4)単独世帯の消費を時系列的に振り返ると、2人以上世帯との格差は着実に縮小し、大きくブレていた支出拡張線も次第に安定してくる事実が確認できる。このことは、単独世帯としての生活の枠組みが形成されつつあることを提示する。若年単独世帯と高齢単独世帯では、外食費や医療費などにおいて、明瞭な相違があることはいうまでもない。なお、単独世帯の1人当たり消費額は、2人以上世帯を上回っており、需要や消費という側面からの単独世帯の社会的な意義をあらためて見直す必要がある。 5)単独世帯をめぐる言説は、楽観論か悲観論に分化しているが、実態はいづれかに決せられるわけではなく、2人以上の親族世帯と異ならない生活構造を形成しつつある。したがって、単独世帯の生活を非家族的と解することには無理があり、社会を構成する不可欠の生活単位として位置づけねばならない。
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