研究概要 |
未曾有の高齢社会の到来に対応するわが国の高齢者ケア政策は,介護保険導入の検討とともにケアマネージメント・システムの必要が強調されている.本年度の研究では第1にイギリスの「国民保健サービスとコミュニティケア法」制定後の地域ケアについて,とくにケアマネージメントに焦点をおいて調査,検討を行った.具体的に対象として地方自治体は,海外出張の機会を利用してオックスフォード州でのヒヤリングを実施することができたが,さらに同州およびハンプシャー州社会サービス部担当者,政府関係者,研究者の来日時に討議を行い,地方自治体の責任のもとで実施するケアマネージメントが,コミュニティケアの中核的機能として要介護者へのサービス供給に重要な位置を占めていることが明らかにされた. 第2に,日本の高齢者地域ケア政策は在宅ケアが強調されているが,長期・継続的ケアを必要とする利用者に対する適切なニーズ・アセスメントによるサービス供給についての機能は制度化されていないので,介護支援センターなどで先行的に実施されているケースマネージメントについてのヒヤリングを実施した.イギリスとの基本的相違点は行政とは別の組織(介護支援センターは民間老人ホームに委託されている)で,個別援助の方法として試みられており,包括的地域ケア・システムとしての展開にはかなりの差異が認められた. 高齢社会における地域ケアシステムの形成は21世紀地方自治体にとっての重要課題の一つであるが,ケアマネージメントをどのように位置づけるかについて,行政主体型といえるイギリスと民間依存型を試みている日本について,その効果比較に関する検討は,さらに次年度に推進する予定である.
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