94年度は、7月から11月にかけて池子米軍住宅建設反対運動に関わる人々(12人)に対して集中的な面接調査を行ない、現在、91年夏以来の諸出来事への関わりならびに運動の変化について記録を作成している。長い録音テープを文書にするとともに、これまで整理してきたデータと突き合わせ作業を始めている。さらに12月には市長選挙が行なわれ、これにも参与観察を行なって記録を収集したが、これについても、整理作業を始めたところである。さらに、これまで収集してきた膨大なインタビュー記録、電子計算機内のデータ、文書資料類の整理作業を実施し、明年度のまとめのための準備を進めている。 5月に米軍住宅建設受け入れに市長の基本方針が変化し、これに伴い市内が粉糾し、年末に市長選挙が行なわれた。現職の敗退、受け入れ派の当選という結果を生んだが、すでにこうした趨勢へと変化していく気配は、現在精密に整理をしている91年以来の出来事について調べた本年度のデータからもわかる。かつての受け入れ反対運動の一枚岩的な結束が、ここ3年ほどの間に急速に崩れていっていったことが理解できる。かつて一枚岩を誇った運動組織も、問題の長期化に伴い、成員間の関心の相違や居住地域の差異から、内部でのグループ化が進み、グループ間の対立が、かなり激しくなっているところも確認することができた。かえって、かつて対立していた受け入れ派の一部と、受け入れ反対派の一部とが協力関係を結ぶような事態も確認することができたほどである。12年に及ぶ運動が、急速に終息していく気配を見せているが、受け入れ派市長のものとで、これまで運動が残してきた遺産がどのように継承されるのか、あるいはまったく新しいものに取って代わるのか、さらには住民それぞれの意識の急速な変化をさらに記録するために6月から実施する半構造化した面接調査の項目作成作業を進めている。
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