研究概要 |
「プラグマティズムと社会学」との関係についての研究関心は以前から抱いていた。それはデュルケームに『 プラグマティズムと社会学』という著書(同表題での講義を彼の死後に著書として出版)に強く惹かれたことと、M.ウェーバ,Tパーソンズおよび新明正道の行為論とプラグマティズムに関する論文に強い興味を覚えたからである。そこで、「プラグマティズムと社会学」との関係を研究するためには先ずプラグマティストの著作に触れることが先決条件であるが、仲々その著作を入手することは種々の事情から困難であった。ただW.ジェームズの若干の著作とプラグマティズムに関する若干の論文が手許にあったので、アメリカのプラグマティズムの誕生の経緯と、W.ジェームズのプラグマティズム論,フランスにおけるプラグマティズムの受容についての研究論文を発表することができた。そのうえ,科研費の助成があったことで必要文献を購入する資金ができ,あまつさえ幸運なことに海外でこの3,3年にプラグマティストの著作の再版が出て,その相当部分を購入することができた。また国会図書館,種々の大学から文献を入手することができた。しかし,その間M.ウェーパ-,Tパーソンズ,新明正道の行為論を比較研究し,三者の行為論についての論文を発表した。しかも三者の行為論とプラグマティズムのそれとを今後検討する必要があることを痛感した。科研費の申請書にも書いた通りプラグマティズムは190以降真正面から真理論に取組んだ哲学であり,以後,哲学における記号論,意味論に及ぼした影響は大きく,またその宗教論,概念論,個人と社会との関係説は社会学,とりわけデュルケームのそれと著しく対照的であり、今後両者の種々の観念を仔細に検討するとともに,デュルケームのプラグマティズム批判が正確を射ているか否か,更には両者間の相違点のみならず共通点が存在しないかどうか,プラグマティズムが新明社会学の中にどのように反映されているかどうかを検討する必要があり,現在これらの点について研究中で,その成果を次々に発表していく予定である。
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