本研究は、戦後日本官僚制の機能を、その中枢に位置した上級官僚の「ライフコース」と関連づけた役割認知行動の様態から検証評価することを主題とする。この達成のため、本年度は以下の2種の調査を実施した。 1。『職員録』の1965・1975・1985・1995年版から局筆頭課長クラス以上の上級官僚のうち、1938〜45年、1948〜55年、1958〜65年、1968〜75年に入省し、かつ、1993年版『人事興信録』または1995年版『職員録』に記載者を、それぞれ163名(C1)、295名(C2)、225名(C3)、215名(C4)の計898名抽出し、その学歴、官僚・退官後職歴などの客観的キャリアを『人事興信録』『全国官公界名鑑』の各年版に拠りながら調べた。 2。同対象者に対し、1995年2〜3月に、標準的・非標準的出来事の時機、出来事間の同調、コンボイ、人生指針等、ライフコース・データの収集を目的とした質問紙調査(郵送法)を実施した。回収数は3月13日現在、313(C1:69、C2:129、C3:60、C4:55)である。以上の調査によるデータ分析作業は現在継続中であるが、次に知見のいくつかを列挙する。(1)結婚年齢は、C3の28.8歳とC1の27.7歳を高低の極とする。(2)親からの独立年齢はC1の19歳からC4の23歳へと遅くなる。(3)長子誕生はC1の29歳からC4の31歳へ遅くなり、逆に、末子誕生はC1の34.6歳からC4の33.2歳へと早まる。(4)全子の学校教育終了はC1の56.4歳からC3の54.7歳へ、結婚独立はC1の62歳からC3の57歳へと早まる。(5)入省年齢はC2の24.2歳が最も高く、C4の23.4歳が最も低い。(6)本省庁課長初任は、C1で入省12年後の35.8歳、C2以降は入省16.5〜17.2年後の40.5歳前後である。(7)局筆頭課長就任はC1の42歳(入省18年後)からC4の46歳(同22.6年後)へ、局長就任はC1の48歳(入省24.2後)からC3の52歳(同28.9後)へと遅くなる。(8)退官は、C1:53歳、C2:55歳、C3:54歳である。
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