研究概要 |
平成7年度は、「獄中ノート」第二期の「特別ノート」(第8ノート〜第17ノート)における、「ノート」全体の中核的概念である「市民社会」概念の分析を軸に「ノート」の再構成を行なった。まず第一には、「国家=政治社会+市民社会,強制の鎧を着けたヘゲモニ-」というグラムシの定義において、狭義の国家「強制-服従)に対する、同意と指導の体系としての広義の国家(「拡張された国家」)における「市民社会の諸組織(アソシエーション)」の重要性に関する探究が「第一ノート」から着手されており「アソシエーションの体系」としての市民社会という視点が明確化されることである。 第二には、したがって、「市民社会のヘゲモニ-装置」をめぐるヘゲモニ-抗争が展開される場、領域としての市民社会(陣地戦)という位置付けが明確となり、そこにおける知識人(ヘゲモニ-形成の担い手)とアソシエーション、社会集団との関係、コモンヤンスの問題等が市民社会概念の内在的発展として展開される。(「第12ノート、知識人論」の意義はそこにあるといえよう。) 第三には、「永続革命」論批判としての「市民社会」概念であり、そこでは、マルクス的「国家の死滅」テ-ゼは、遠ざけられ、「政治社会の市民社会への再吸収」「新たな市民社会形成」の課題(societa regolata形成)が理論的に整序され、市民社会を「過程としての再吸収」の諸契機「自己統治、経済的平等にもとづく政治的平等等)を内包する社会として把握する視点がより明確になってくる。以上の三点を総合した「市民社会」概念をふまえた、各ノート(主題別特別ノート)の分析が今後の課題である。とくに、「第12ノート」(知識人論)「第13ノート」(マキアヴェリ論)が第二期「特別ノート」のなかで、特別の重要性をもつ「ノート」であることが明らかになってきたといえよう。
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