研究概要 |
本年度は、グラムシ「市民社会論」を『獄中ノート』校訂版にもとづいて、再構成し、あわせて、戦後社会科学における「市民社会論」におけるグラムシ市民社会論の意義を検討した(共著『転換期の社会と人間』、法律文化社 所収論文)。とくに従来解明されないままであった「Societa regolata 自律的社会」が「自治社会Autogoverno」と同義であることを明らかにし、さらにこの論点が近代国民国家形成期(リソルジメント期)における「コム-ネcomune」(自治体)問題の位置づけをめぐる論争(いわゆる自治体社会主義論、Socialismo municipale)と内在的に関連していることを明らかにしえた(『歴史評論』1997年1月号所収論文)。また「市民社会論」が「第12ノート:知識人論」へ展開し、中・後期各「ノート」の文化論的展開の媒介的位置を占めることを解明しえたことは、今後の「ノート」の文化論的各テーマの解読に大きな手がかりを得たと考える。いいかえれば、中・後期における「文化論ノート」は、市民社会論の「知識人論」的再編を起点として形成されるということであり、民衆文化論,フォークロア論,コモンセンス論等の多様な「文化論関係ノート」は、市民社会論・知識人論の内在的展開として位置付けられる必要があるという点である(「グラムシ『知識人論ノートの再検討(I)、(II)」『立命館産業社会論集』32巻3号・4号所収論文)。
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