研究概要 |
大阪府下には約50万戸の木造賃貸住宅があるが、その大半は大阪市の外縁部いわゆるインナーリングエリアおよび大阪市の核的中心部(CBDs)の周辺地に集中し、「老朽密集住宅地」を形成している。老朽密集住宅地は、防災上、環境上、保安上の諸問題を持つ地区として,その再開発が現下の緊急な課題となっている。しかし、これまでわが国では再開発といえば,駅前,都心,副都心などにおける商業・業務促進型再開発が中心であり、老朽密集住宅地区を対象とするような住宅・住環境整備型再開発は、企業採算にのりにくく,しかも関係者の利害関係が錯綜するため,その実現は例外的であるといわれてきた。 本研究では,いわゆる老朽密集住宅地をめぐって,西ヨーロッパ,特に都市再開発に関する理論的実践的蓄積の豊富なドイツにおいて主流となっている住宅・住環境整備型再開発の事例と,わが国の再開発事例を比較研究することにより,両国における都市計画,都市建設,さらには都市生活への対し方の共通点と差異点を析出した。わが国の事例として,大阪府寝屋川市東大利地区を取り上げ,再開発関係者の意識と行動を分析するとともに,再開発事業にともなう住民の入れ替え,立ち退き,なぜわが国の再開発が遅々として進まないのか等の諸問題を浮き彫りにした。また,ドイツの事例として,ミュンヘン市はハイトハウゼン地区を取り上げ,都市建設促進法(Stadtebauforderungsgesetz)による各種の強制力,地区詳細計画(Bebauungsplan)に代表される都市計画について紹介した。なお,わが国の第2の事例として,大阪市中央区桃谷地区を取り上げ,住民の入れ替え(いわゆるGentrification)について,現在分析中である。
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