農村の地域社会変動は、これまで一方に伝統的モデルを設定し、それの変動過程を取り扱うことが主流であったが、本研究は特定の農村を実態調査をとおして、その変動過程を追究することが課題であった。 1.まずわれわれが、昭和47年に調査を実施した京都府綾部市黒谷地区を調査対象に選定した。 2.そこで、昭和47年の調査原票の整理・分析を行った。それによると、この地区は伝統的な和紙の村落であり、当時製紙農家は70%であり、製紙雇用労働農家も50%を占めていた。また家族構成に関して、核家族が54.3%、直系家族が38.6%であり、他の農村村落と比較すると直系家族は少ないという傾向がみとめられた。 3.それに対して、高度成長以降の20年間の変化は、大きなインパクトを村落、家族に与えたものと思われる。つまり、製紙農家の減少化に顕著に現れており、兼業化が進行していることが明確になった。それとともに、一方では家族も直系家族は跡継ぎ世代の村落外就業の増加に対応して維持されながらも、跡継ぎ世代の他出化も顕著であり、老人のみの世帯の増加しており、村落の老齢化が進行しているものといえる。 4.しかし、村落構造および同族組織(カブ)は現在でも維持されていることも確認された。したがって、今後就業構造と家族構造、親族組織、村落構造との関連が詳細に分析される必要がある。
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