1.調査対象に選定した中学校三校が採用している選択教科制には、事前指導、選択科目、希望者の調整法、および評価法において、カリキュラム構成上の差異が見られる。このことが生徒の教科選択行動の動機面に規定的な作用を及ぼしている。 2.教師へのききとりの結果から、生徒の性別と教科選択行動との相互関係が一定、明らかにされた。たとえば、教科への志向が、女子生徒と男子生徒の間で、表出的志向と道具的志向とに分化している。その原因は、生徒の将来の進路への見通しの違いがあげられる。 3.各中学校における選択教科制の運用方式は、こうした性別による教科観の分化に何らかの形で、関係していると思われる。この相互関係を明らかにするためには、生徒の個人別データによる時系列的分析が必要であり、来年度にその調査を準備している。 4.本年度の予備調査の結果が、来年度の調査計画に示唆する点はつぎのことである。 (1)生徒の将来展望のみならず、生徒の両親および教師の教育期待の内容を考慮すること。 (2)生徒の仲間集団とそこで形成される性別下位文化による影響を明らかにすること。 (3)選択教科の授業場面における生徒の適応行動を具体的に把握すること。
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