本研究の成果は、中学校において選択教科制カリキュラムを開発するにあたって、生徒集団のもつ社会的な諸特性を考慮に入れる必要性を明らかにしたところにある。 以下、その要点を列記するば、つぎの通りである。 1各中学校は、選択教科制の運用方式のなかに、生徒の選択行動を統制するため戦略を事前に組み込み、彼らの学習意欲を増進させるうえで一定の効果を上げている。 2しかし、この統制戦略が予測しがたい生徒の適応行動が仲間集団において生じており、その潜在的な適応行動は、選択教科制の運用にとって、順機能的な型と逆機能的な型とに区分されるが、とくに後者の場合、教師たちに自視される傾向がある。 3生徒の選択教科制への適応行動は、ガイダンスによる戦略の枠組に統制されるその一方で、彼ら独自の意味付与と状況規定を構成する。本研究では、その事例を、集団学習のもたらす副次的効果、およびジェンダーによる潜在的な適応行動において確認することができた。 4統制理論の利点はカリキュラムへのこうした潜在的な適応行動を学習者の関係の変化を中心に観察しうるところにあって、したがって、今後、この理論枠によるカリキュラム開発研究において、学習者に特有の集団行動の特性という視点から実証的資料の収集を図ることが有益である。
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