平成6〜8年度の研究によって得られた新しい知見は、以下の通りである。 1 ヨーロッパ統合の拡大と深化に伴ない、欧州共同体内の職業教育・訓練には、集中化(コンヴァージェンス)と分岐化(ダイヴァージェンス)との相反する傾向が出てきている。欧州共同体による超国家的法制と補完成(サブシディアリティ)の原理との矛盾とみることもできる。その意味で、介入主義者と規制緩和主義者との間の緊張も高まってきている。 2 欧州共同体内には産業関係(Industrial Relation)を規制する法制には、3つのタイプの伝統が存続している。ローマン・ゲルマン的、アングロ・アイリッシュ的、およびノルディック的の3種類であり、これらが職業教育・訓練のあり方にも影響を与えている。 3 集中化を求める要因としては、超国家的法制、多国籍企業の役割、組織的・技術的変化の職業への影響、各国における職業教育・訓練政策の相互借用等があげられる。 4 欧州共同体における職業教育・訓練制度へのプレッシャーとニーズについて、イギリスのピーター・スコットとマイクル・ケルハ-は、その主要なものとして、次の4つをあげている。 (1)職業教育・訓練の絶対量を増やすこと。養成・現職の両段階においてそうすること。 (2)職業的能力と職業資格の平均的水準を高めること。 (3)職業教育・訓練制度の効率と質を保証する手続の簡素化と向上をはかる。 (4)職業教育・訓練制度の柔軟性を高め、産業界のニーズと関連づけ、職業教育・訓練の魅力を高めること
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