全国の市教育委員会への郵送調査では、戦後から今日までの間学校統合は実施されたことがなく、また、近い将来にも予定はないとする教育委員会は、30%弱で、大多数の教育委員会が学校統合の経験を持っていることが分かる。その場合の、学校統合実施理由としては、人口減少による学校規模の小規模化がもっとも多くあげらてれいる。通説的に、昭和30年前後の市町村合併によって学校統合が全国的に進められたとされているが、市町村合併を理由としてあげている市は極めてわずかである。 さて、このようにかなりの市教育委員会が経験を持っている学校統合について、統合の実施によってどのような成果が得られたかを見ると、学校の施設設備の改善、学校規模のアンバランスの解消、児童・生徒集団の活性化が上位を占め、統合を機にした教育指導の改善は、それほどの支持を得ていない。反面、学校統合により、児童・生徒集団の形成などの面で支障が生じたかどうかを見ると、児童・生徒の適応の早さを指摘する声が強く、統合がもたらしたマイナス効果についての指摘は極めて少ない。 学校統合の実施に関しては、教育委員会の意識としては学校教育の条件整備という観点が強く、教育指導に関しては学校が行うことという分担意識が強い。もちろん、条件整備の観点のなかには教育指導そのものの改善に対する意識も含まれているが、教育委員会は条件整備こそを自らの責務とする意識が強いために、教員が学校統合の意思形成の過程の重要な参与者とする観点は弱い。このことが、教員の側に新しく建設された統合校に対する無関心を醸成している側面があり、「統合を機に」した教育指導の革新を阻害しているように見受けられる。なお、しかし、「参加」という契機が教育指導のプロセスにどのように、どの程度影響を与えることができるかについては、今後検討すべき課題である。
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