三年間にわたって、アメリカ進歩主義教育期における実践的知性観がどのようなかたちで普及し、現在どのような影響を与えているのかを、批判的研究もまじえて検討した。研究の成果は以下のようになった。 1.アメリカ教育を特徴づけるプラグマティックな実践的知性は、ラディカルなリヴィジョニスト教育学者によって「中立的・実証主義的・中産階級的」であり、「制度に対処できない、普遍性を追求する」ものであると批判されているが、狭い党派的連帯主義ではなく「協働性」に基づいた社会的知性の観点から見直す必要がある。 2.実践的知性の具体例としての「学問の自由」についての論講を取り上げた。進歩主義的な「探究の自由や真理追究者」は気まぐれで、権力の召使い的であると批判されているが、現在ではその前衛的・反逆的なリベラリズムを評価するものもある。 3.実践的知性の代表例としての「探究」は、個性の育成のための教育と密接なつながりがある。それは1930年代に行われた「八年研究」の実験でも検証された。ただし、現在では「個性に応じた教育」という名目で、生徒の能力に応じて、独立心旺盛な「探究的態度」の育成と、依存的で低い自尊心の植えつけ、という矛盾を生み出しているという批判もある。 4.現代の学校教育は、状況のなかから自己に必要なものを読みとり個性的生き方を追求する「探究知」の学習を必要としている。それは、自己アイデンティティの発見やケアする能力を育む「探究空間」を提供することによって、「パーソナルな意味体系」の構築・再構築をめざす「協働探究者」の育成を重視する。 今後も、進歩主義教育期の「社会的知性」の展開との関わりで、「協働的探究」の意義を追求していきたい。
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