スリランカの聴覚障害教育について全体像を把握するため、独立後のスリランカの障害児教育政策の歴史的変遷を収集資料を基に分析、整理した。新たな知見は以下に示す。1960年代後半より、すべての子どもが教育を等しく受ける権利の下に、就学率を高める政策がとられ障害をもつ子ども達も地域の学校で教育をうけることができるようになる。スリランカ教育省は障害児の地域の学校での就学を支援する体制として(1)障害児学級の設置(2)障害のニーズに応える教員養成制度の確立と充実(3)障害児学級の教材の開発と活用のための指導法の研究等を中心に推進してきた。しかし1980年代より「障害をもつ子どものニーズに見合う教育の充実」が教育省より問題提起された。そして(1)教員養成のカリキュラムの再編(2)通常学級教師の障害をもつ子どもへの教育と障害の認識(3)障害児学級教師と通常学級教師との協力体制等の具体的諸問題が指適された。1990年代、スエ-デンの国際機関の援助をうけ、新たな障害の概念に基づき、多様な教員養成を各地域で開始した。主な内容は(1)通常学級教師への障害をもつ子どものニーズに関する23週間の研修(2)各地での教員研修のための講師チームを養成する3年間の学士コースの設置(3)校長等への子どものニーズに対応する学校の組織化を目的とする研修等である。 また、スリランカで現在、実施されている聴覚障害教育の教員養成の内容が通常学級のすべての子どもの聴えのニーズにも応えていく普遍性を志向していること.そして教育政策ガイドラインを作成して、子どもの教育的ニーズに対応する教育体制を再構築していることを調査した。「すべての子どものための教育」「新たな学校改革」の思想がスリランカでも具体化されつつあり、今後の国際協力の具体的課題について考察する基礎資料を得た。
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