本研究の目的は、「口承の教育」の実効性の検証にある。すなわち、カンやコツの獲得を主体とした芸能の伝承内容(教授内容)が「口承の教育」によってどの程度正確に伝えられているのか、正確に伝えられているとすればそれは何故なのかを明らかにすることである。このためには最低限2年間の記録を比較対照する必要があり、平成6年度は次の2点から研究を進めた。平成7年度に「研究成果報告書」をまとめる予定である。 1芸能の成立に関する検討 各地を代表する芸能(下記)の成立に関する歴史的研究。並びに、歴史学・民俗学・芸能研究に関する先行研究の批判的検討を通して、これまで等閑視されてきた「口承の教育」についての教育学的体系の把握。 各地を代表する芸能の調査及び記録 これまでの研究代表者の事前調査により、6つの芸能を事例として選択したが、以下の諸点については研究遂行上、問題点が生じた。 (1)研究代表者が選定した各地の芸能のビデオ収録のうち、沖縄竹富島のタナドウイは旅費、日程の都合上、割愛せざるをえない状況となった。 (2)その他のビデオ収録は行ったが、動作解析のためのビデオ収録は定点観測、ギャリブレーションなど最低4〜6人の撮影者が必要となることが分かった。しかし、研究補助者への旅費・謝金も不足したため、社町上鴨川神社の神事芸能のみが動作解析用のビデオ収録となった。
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