まず第一に、障害児の後期中等教育制度に関する歴史的研究により、法制の理念と枠組みを明らかにした。戦後教育改革期における制度理念(米国教育使節国報告書及び学校教育法の制定)は、「6→3→3制」の接続した学校教育体系の一環として、障害児にも後期中等教育を保障することであった。具体的には、盲・聾・養護学校に高等部を開設しうる(学校教育法71、72条)とともに、希望者全入制の高等学校にも「特殊学級」が開設しうる(同75条)としていた。後期中等教育は、義務化が未実施であるとはいえ、法制理念的には障害児を含めた希望者全入制を志向するものである。 その上で、第二に行政による法制の運用実態の分析を行い、法制理念と行政実態との格差を実証的に明らかにした。その結果、障害児の後期中等教育進学には次のような6つの格差・差別が重層的に存在していることが指摘できる。すなわち、(1)障害児差別:一般の進学率約95%に対して障害児全般の進学率が低い、(2)傷害種別による格差:障害児でも盲・聾学校関係はほぼ希望者全入制である、(3)都道府県間の格差:都道府県間で進学率が大きく異なる、(4)地域間の格差:同じ県内でも養護学校の不適正配置等によって地域間の格差が少なない、(5)障害程度による格差:同一県の同じ養護学校でも重度障害者に進学制限が残されている、(6)訪問教育児差別:高等部での訪問教育の制度化が遅れているために訪問教育児が進学制限を受けている、である。 最後に、実証的な研究を踏まえて、障害児の後期中等教育に関する法制及びその行政運用のあり方を権利論的に考究し、思春期以降の「青年期教育」としての位置づけの上に、前期と後期が接続した「完全な中等教育」観を徹底する重要性を提示した。
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