前年度に行った予備調査とその結果についての考察から、次のことが確認されていた。 1.戦前の両大戦間の時期の広島、那覇両都市の子ども期は、「室内化」された子ども期への変化の途上にあったこと。 2.しかしながら、この室内化傾向は必ずしも直線的に進行したのではなく、証言者の出身地域、及び出自社会階層によって、その変化の仕方には、かなりの差異が見られること。 3.とくに地域による差異に関しては、広島と那覇とで異なることはもちろん、それ以前に、広島・那覇、両都市内部での地域差が大きいと思われること。 このような、考察にもとづき、研究第二年度の今年度においては、広島に関しては、白島町と福島町という、広島市内の別の学区にくらべると、理念型的な地域社会の特性をより強くのこしていると想定される学区に焦点をあて、それらの地域の出身者を集中的にインタビューした。他方、那覇の調査を担当した嘉数は、社会階層による室内化過程の相違に着目し、予備調査の時点では欠落していた、小市民階層出身の証言者を中心に調査した。 その結果の一部についてすでに、公刊したが(鳥光 1996、嘉数 1996)、これらの論考は主として方法論的な問題をあつかったものであり、これらのデータをもとに当時の子ども期を再構成するという、作業は、今後も継続していく必要があると思われる。
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