研究概要 |
本報告書と研究分担者である嘉数は、戦前の広島と那覇のこの生活空間を再構成することを目的とする、聞き取り調査を、二年以上にわたって行ってきた。その間に、広島出身の証言者51名、那覇市出身の証言者35名をインタビューした。証言者の最高齢者は、1904生まれ、最も若い証言者は1947年生まれだが、多くは、1910年代から1920年代初頭に生まれた方たちである。これらの証言データからは、以下のことが明らかになった。 1.当時の両都市の子ども期は、「室内化」の方向へとむかう変化の途上にあったこと。 2.だが、そのような室内化傾向は、かならずしも直線的なものではなく、証言者の出自社会階層と地域による差異が顕著であったこと。 これらの点は、本研究第一年次に行った予備調査の結果からにおいても、すでに明らかであった(鳥光・嘉数1994,嘉数・鳥光1995,鳥光・嘉数1995)。そのため、これらの結果にもとづき、第二年次の調査においては、那覇担当の嘉数は社会階層に注目する一方、他方広島担当の鳥光は地域の差異に着目し、広島市内の他の学区に比べて理念型的「地域社会」の特質をより強く残していると指定される二つの学区の出身者を主に調査した。 これらの結果の一部はすでに公刊している(鳥光1996,嘉数1996)が、それらは主に方法論的な問題をあつかったものであり、証言データにもとづいて、当時の子どもの生活空間を再構成するという、課題の取り組みは、現在なお、進行中である。
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