本研究では教員養成大学・学部に学ぶ学生の教員離れの構造を理論的・実証的に明らかにしていくことを目的として、以下の3点についての理論的・実証的研究を試みた。即ち、(1)教員採用の実績とその中に占める教員養成大学・学部の割合、及び教員需給の将来展望、(2)教員養成大学・学部に学ぶ学生の教職指向や教職の魅力度、教員外就職のプロセス等についての質問紙調査、(3)教職選択の数理社会学的モデルからの検証、である。 その結果、教員養成大学・学部を卒業した者の教員就職率は毎年、減少傾向を示し、平成6年度の教員採用数は過去最低を記録していること、にもかかわらず、教員採用者に占める教員養成大学・学部卒業生の割合は一貫して増加していること、厚生省人口問題研究書『日本の将来推計人口(平成4年9月推計)』や、『1992年学校教員統計調査』などのデータから今後の教員需給を予測すると、1991年の生徒/教師比率を一定として考えた場合、小学校の1995〜2000年では3000人程度しか見込めないこと、しかし、2000〜2004年では15000人程度、2005〜2009年では25000人程度が見込めること、中学校で教員需要が増大するのは2005年以降のことになること等の結果が提出された。アンケート調査の結果については、集計・分析の途中であり、今後の分析に待たなければならない。教員需給の構造を数理社会学モデルによって検討してみると、教員養成大学・学部に学ぶ男子の競争力が弱いこと、国庫補助金の教員の人件費に対する割合が減少しており、そのことが自由競争モデルではなく、不況時における短期大学卒業生の採用増加につながっていることなどの知見が得られた。
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