本研究では、教員養成大学・学部に学ぶ学生の教員離れの構造を理論的・実証的に明らかにしていくことを目的として、以下の3点について調査研究を行った。即ち、1.教育系大学の教員採用の実績と将来的な需給の関係、2.教育系大学に学ぶ学生の教職観と職業的社会化のプロセス、3.教職選択の数理社会学的モデルからの検証である。その結果、以下のような知見が得られた。 1.教員採用数は、小学校で2001年、中学校では2004年、高校では2007年から、増加に転じるものと予測される。採用数をPT比設定A、人口出生数中位推計で計算すると、小学校と中学校を合わせて2005年に25000人を越え、2009年には33、000人に達する見込みである。現在の教員需要数は全国的に少ない状況にあるが、今後の回復は大阪、京都などの関西圏、東京、神奈川、埼玉などの首都圏を中心に始まり、それが周辺の都道府県に拡大していくのもと推測される。 2.教育学部に学ぶ1600人を対象にしたアンケート調査から、教職志向の強弱には大学間で差異が見られること、広島大学学校教育学部では学生の教職志向が強いこと、学年が下がるにつれて教育学部を受験することの決定時期が遅くなっていること、教育学部の受験を決定する時期が遅ければ遅いほど教師になりたいと考える学生も少なくなっていること、どうしても教職に就きたいと考える学生は25%程度に止まっていること、また、近年の噴出する教育問題に対して、教師や学校に対するパッシングが教師になることの自信喪失につながっていること、などが明らかになった。 3.景気の動向が採用する側、採用される側の双方に影響を及ぼしている。
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