鉄鋼の生産現場労働は大別してライン労働とメンテナンス労働に分けられ、両者は基本的に分業されている。生産工程の流れに沿って遂行されるライン労働の中心は、機械設備の運転・監視のいわゆるオペレータ労働であるが、自動化・コンピュータ化の下で監視労働の要素が高まっている。とはいえ、工程によっても異なるが、完全なコンピュータ・コントロールには限界があり、なお人間労働の介入を必要としている。こうしたカンやコツを習得するには依然として長期間にわたる経験が必要とされる作業もあるが、全体的な傾向としては、平常的な運転に関しては経験的要素が後退していることは事実である。一方、メンテナンス労働における大きな変化はやはりコンピュータの導入である。たとえば、新しく導入された設備診断監視システムは工場の機械設備の制御情報をオンラインで自動的に取り込み、設備異常管理や設備自動診断(傾向管理)を行い、故障の未然防止や再発防止を図る装置である。また、エキスパートシステムは3交代の電気整備マンが持っていた故障診断知識をAI化したもので、設備診断監視システムの診断結果もネットワークで取り込まれており、ラインマンがこのエキスパートシステムと対話することによって故障の一次対応が可能となった。このようなメンテナンスへのコンピュータ導入は、メンテナンス労働の経験的熟練を客観化させ、それを知識として習得させるようになってきている。こうしたなかで、メンテナンスマンに求められる能力はシステム化、体系化された科学的知識に裏付けられた理解力、問題解決能力なのである。この種の判断能力はOJTでは得にくく、OffJTこそが満足させ得る。さらに教育訓練とりわけ層別教育は昇進・昇格管理と緊密な結合関係にあるということである。とはいえ、OJTが作業長を対象として行われているように、OJTは能力開発の基本として改めて再認識されている
|