80年代以降における鉄鋼業の生産工程上での技術的変革として、全体的にはコンピュータ化の一層の進展を見ることができる。その結果としてメンテナンス業務をはじめとして鉄鋼労働に多大なインパクトを与えている。こうしたなかで鉄鋼労働の今日的特徴について、まずライン労働の場合、機械設備の運転・監視といったいわゆるオペレータ労働が中心となるが、コンピュータ化・自動化の進展にともなって監視労働の要素が高まってくる。一方、メンテナンス部門へのコンピュータ導入はメンテナンス労働の経験的熟練を客観化させ、それを知識として習得させるようになってきている。つまり、メンテナンス労働の経験的要素を科学的技術的知識に置き換えることを要求しているのである。 教育訓練は70年代よりも昇進昇格管理との結合という点で更に強化されてきている。役職への昇進は職能資格上での昇格が必要条件になっており、教育は役職への昇進、資格への昇格と密接に結びついている。そして、前述のようにAI・ME化の進展は工程の連続化、高速化をもたらし、メンテナンスの比重を量的にも質的にも高めるのであり、科学的な知的労働、判断業務という70年代とは異なるメンテナンス労働に適合的な集合教育(Off-JT)がメンテナンス教育として重視されてきた。メンテナンスマンに求められる能力はシステム化、体系化された科学的知識に裏付けられた理解力、問題解決能力であり、この種の判断能力はOJTのみでは得にくく、Off-JTこそが満足させ得るからである。 鉄鋼業において企業内教育とともに能力開発の重要な一翼を担っているのがJK活動である。生産性向上の一環として行われる小集団活動としてのJK活動は、取り組みの結果としての効果そのものよりも、プロセス重視が強調されている。
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